OUTBACKで生まれたちょっといいお話集

いろんな方々の人生に参加しているんだなと実感します。

品川高輪

OUTBACKER | HARUさん
2024 Vol.10 Episode2

アウトバックで働き始めて11年が経過しました。これだけ長い期間になると、いろんな方々の人生に参加しているんだなと実感します。恋人だったお客様は夫婦になり、親になり、食べに来ていた小学生のあの子はこのお店のスタッフに。変わらず存在し続ける難しさや素晴らしさを、日々感じながら働いています。そんな中での出来事です。
 今年の11月下旬にさしかかり、やっと初冬の寒さを感じ始めた頃、お店のバックヤードで仕事をしていた私に、後輩のバーテンダーが声を掛けた。「HARUさんを知っているお客様がカウンターに来られてます。」カウンターに入ると10年前の記憶が甦った。5名程のグループでよく来店していただいていたお客様の一人。私と世代も近く、いろんな話で盛り上がった頃が懐かしい。短い世間話の後、バックヤードに戻ろうかと思ったとき、衝撃の事実を伝えられた。一緒によく来店していた方の訃報だった。
 「今度の11月29日が〇〇さんの命日なんです。ずっと伝えなきゃと思っててね。」なかなか言葉が見つからない私に気を遣ってくれたのか、話を続けてくれた。「でもさぁ、わざわざ”いい肉“の日に逝かなくたってねぇ…。」と微笑んで俯いた。私にはなんだか泣いてるように見えた。そして、顔を上げたその方は満面の笑みで言った。「それでね、29日にまたあのメンバーで食べに来るんです!あの頃みたいに!」
 11月29日、私は私用を済ませて10年前を再現するため、アウトバックへ向かった。当日は出勤ではなかったが、社員さんに許可をもらいBARに入る。よく座っていた席に懐かしい顔が並んでいる。登場の仕方を考えていたが、嬉しさのあまり両手で手を振りながら駆け寄ってしまう。再会を喜び、〇〇さんの好きだったハイネケンを真ん中に置いて、皆で乾杯。昔話に花を咲かせた。皆が〇〇さんの話を嬉しそうに話す様子が、その方がどんな人だったのかをよく伝えていた。〇〇さんもきっと、大好物のチキンウィングを頬張りながら、笑ってくれていたことだろう。そして、お客様の一人が嬉しそうに呟いた。「あの頃に戻ったみたいだね。」
 自分の中で、もちろん変わった部分はあるけれど、大切なものは変わっていないと教えてくれた時間でした。こんな経験ができたのも、23年間変わらずに存在し続けてくれたこの店があったからです。そのために日々尽力していただいているスタッフ、アウトバックに関わる全ての方々へ心から感謝したいと思います。