OUTBACKで生まれたちょっといいお話集

幼い頃に家族で通っていた品川高輪店。巨大な螺旋階段を下りた先に広がる別世界。

梅田

OUTBACKER | YOSHIHISAさん
2025 Vol.9 Episode8

 「ねえ、何であなたは OUTBACKで働こうと思ったの?」 ある時、常連のお客様に突然問い掛けられた。
 幼い頃に家族で通っていた品川高輪店。巨大な螺旋階段を下りた先に広がる別世界。満面の笑みでテキパキ働くイケてるお兄さんとお姉さん。ブルーミンオニオンの他にない独特ない味わい。肉厚なステーキと大きなサワークリームが載ったベイクドポテト。そして、バースディソングの大合唱。私は客としてOUTBACKの大ファンになった。大学に入ったら、絶対にOUTBACKで働くんだと決めていた。大学のすぐ近くにあった幕張店。緊張しながらかけたアルバイト応募の電話。初出勤の日の勝手口のドアノブの重さ。怖そうなおじさん店長。もっと怖そうなカウボーイみたいなハットをかぶったマネージャー。鬼のように恐ろしいギャルのトレーナー。分からない事さえ分からない日々。怒られて、怒られて、呆れられて、でも何故か見捨てられないで。そのうち、ちょっとずつ仕事を覚えてきて、仲間が出来て、お客様の顔を覚えて、少しずつ認められて、そしてまた怒られて、の繰り返し。大声で喉が枯れるほど叫んだ「G’day Mates!」 クレームをいただいたお客様の顔は今でも忘れられない。喜んでいただけたお客様の顔と名前も忘れられない。朝が来るまで海辺の公園で語り合ったサービス論議。OUTBACKでバイトをしていた日々は俺の青春そのものだった。はちゃめちゃだったけど最高に楽しかった。毎日が幸せだった。仕事中だということを忘れるくらい夢中になって、常連のお客様と話し混んでしまった。
 「あら、やっぱりそうだったの。」 「あなたを見ていると、いつもニコニコしてとても楽しそうに働いていらっしゃるから。」 「大好きなことを仕事に出来て良かったわね。」
 何故だか分からない。目から涙が一粒こぼれた。今日までの道のりは決して順風満帆ではなかった。辛いことの方が多かった。それでも、ここまで続けてこれた。それもこれも周りで支えてくれたみんなのお陰だ。今でも何が正しいのか迷う時がある。いや、迷う時があるというか、常に暗闇を手探りで迷い彷徨っている。もがき、苦しんでいる。そんな中、俺がOUTBACKで働く意義を、最近になってようやく見つけることが出来た。“最高のバイト先にする”俺が若かった頃に感じた“最高”をあいつらにも感じてもらいたい。心の底から自然と湧き上がってきた純粋な気持ち。強く、熱く、精一杯の想いを込めて、今日も営業に臨んでいく。