OUTBACKで生まれたちょっといいお話集

彼と出会ってもうすぐ3年、顔を合わせない日が両手に収まる程の頻度です。

池袋

OUTBACKER | SHINNOSUKEさん
2025 Vol.9 Episode6

 この話は簡単に言うと、30歳で、フリーターで、コミュ障で、怪しげな男のことです。気付けば彼と出会ってもうすぐ3年、顔を合わせない日が両手に収まる程の頻度で、ほぼ毎日のようにいるスタッフです。
 始めて会ったのは2019年3月にアルバイトの面接に訪れた時。正直、言い方が悪いが見た目は輩。不採用かなと思いながらも、一旦検討すると伝えたのを鮮明に覚えている。4週間ほど保留してしまい、申し訳なかったが忘れていた。他の採用があまりにも少なく、再募集を考えていた時にふと彼を思い出した。さすがにもう違う仕事が見つかっているだろうと思っていたが、彼の携帯に電話を掛けると、2コールで出たのも思い出す。「出るの早いな!」 お店にとってのメリットは、フリーターであったことと、実際話すと謙虚さがあったこと、それだけであった。
 あっという間に半年が経ち、いつも通り仕事をしていると、会社からプロジェクト研修に店舗で参加してほしい、との連絡を受ける。そこで、アルバイトスタッフ数名の中、フリーターということだけで彼も参加させた。そのうち彼は、プロジェクト研修に参加したことによって、見る見るうちに急成長を成し遂げることになる。初めは、人前で話すことで極度に緊張し、声が震え、コミュ障を最大限に発揮していた。そんな彼も、日々の積み重ねで、読書スピーチ、プロフェッショナルスピーチ、店舗の進捗発表など、人前で話をすることで自信を持つことが出来るようになり、堂々と話せるようになれたのだと思う。そして、隠れた文才を発揮し、このアウトバック物語で最優秀賞を受賞し、さらに、謙虚で仕事を怠らない姿勢が評価され、池袋店のEOY(年間の最優秀従業員)にも選ばれる。何とその年の2021年はこのダブル受賞を手にした。
 そんな彼がある日、正社員になりたいと言ってきた。この池袋店で学んだことを生かし、さらに高みを目指して、他の店舗でも働いてみたいと。いつだったか、私と彼の二人で、50人位の前でスピーチをする機会があった時、私自身もかなり緊張したが、彼は想像通りガチガチになり、顔色も悪く、倒れるのではないかと心配したのが、遥か昔のようで懐かしく思う。3年前では想像も出来ないくらいに立派になった。彼の名前は秘めておこう。来年の今頃、彼はどこの店舗で働いていても、きっと活躍しているに違いない。その時は昔話に花を咲かせ、酒でも飲みに行こうと思う。