OUTBACKで生まれたちょっといいお話集

クリスマスの営業を終えた年末の金曜日に、仕事納めまで“もうひと踏ん張り!

池袋

OUTBACKER | YUDAIさん
2025 Vol.9 Episode3

 「お電話ありがとうございます。アウトバックステーキハウス池袋店です。」 「今日の17時から2人で予約お願いしたいんだけど。」 「かしこまりました!」クリスマスの営業を終えた年末の金曜日に、仕事納めまで“もうひと踏ん張り!”と思いながら掃除機をかけていた手を止めて、いつもと何も変わりなくご予約の電話を受けた。池袋店では、平日はディナーのみ営業しており、その前の時間は決まったスタッフが、仕込みやオープン作業をしている。お客様はさらにこう続けた。「あ、あと渋谷店で予約してたんだけど、そっちキャンセルにしておいてもらえる?近くの池袋にあったの今まで知らなくて。」マネージャーにその旨を伝え、連絡してもらった。少し横柄と言ったら大変失礼だが、その中にも飾らず、自然体で感じのいい印象があった。
 朝礼を終え、私はその日、バーテンダー担当だったが、ホールスタッフが全員揃う18時までは、私がテーブルをいくつか担当することになった。17時-18時の間は少人数で営業を行うため、バーテンダーをやりながらテーブルを担当することが多い。そのテーブルの中の一つに、先程のお客様のご予約がたまたま組まれていた。17時にご来店されたのは、ご連絡いただいた男性とお連れ様の女性。体格が良くサングラスをかけている。“うわー怖そうな見た目だなぁ…。”と思っている間もないうちに、年末ということもあり、お陰様で次々と他のお客様のご来店が続いた。バーテンダー兼任の私はそれどころではなくなった。
 「ご来店ありがとうございます!テーブル担当のYUDAIです。よろしくお願いします!」 「渋谷店の方はよく行かれるんですか?」 「うん、池袋にもあるの知らなかったよ。」 「本日はプライムリブもございますので!」といった会話でグリーティングをし、ご注文いただいたビール、カクテルやワイン、それからアペタイザーを提供し、メインのプライムリブを提供した。大好きなプライムリブを平日に食べれることに、驚きと喜びの合わさったような表情で、満足そうに食事を楽しむ姿に私も心から嬉しくなった。店舗によって土日限定の場合が多いのだ。また、さらにお替りのご注文までいただいた。“しかし、めっちゃ食うな・・・。” あっという間に時間が経ち、出勤したスタッフにテーブル担当を交代した。するとバーテンダーに専念していた私を手招きするように呼ぶ。“お会計かな?” その方は1万円を取り出した。“両替かな?” 「分かってると思うけど、これ。」  本当に何だか分からなかった。 「……僕に、ですか?」 恐れ多いが聞いてみた。 「そう、君に。お陰でスムーズに心地よく食事を楽しむことが出来たよ。ありがとう。」 なんと私へのチップでした。こんなに大きなチップを頂いたことが初めてで、どんな対応が適切なのか分からず動揺してしまった。マネージャーと一緒にご挨拶に伺うと、改めてお褒めの言葉をいただいた。落ち着いた口調の中に、熱量と純粋さの入った口調で「素晴らしい。」と。恵みの雨を浴びた木になった感覚だった。そして自分の名前を聞かれたが、自分の名刺を持っておらず、マネージャーの名刺の裏に自分の名前を書き渡した。エレベーター前で固い握手をかわし、お見送りをした。 「ビックリしました。」 「たまにはね。」 彼は見た目とは対照的に、終始優しい落ち着いた口調だ。友達との別れ際のように「また来るよ、またね!」 と。
 ホールスタッフのアルバイトとして入社してもうすぐ4年が経つが、来年からキッチンの社員として働きたいと店長に伝えた後の出来事だった。そんな節目に、一人前のサーバースタッフとして認められた、そんな気がした。特別に何かしたつもりはなかった。むしろバーテンダーの仕事をしながらで申し訳なかったとすら思う。でも思い返せば、お客様のご要望に“ノー”という発想はなく、快く受け入れ、私たちが出来ることを考えて、全てさせていただいた。大きめのグラスや氷の提供をしたり、他のソースや骨を入れるボウル等を持っていったり…。もちろん周りの助けがあってのことである。気付かぬうちに、私も自然とそれが出来るサーバーになっていたようだ。私は営業後、迷わず頂いたチップを全て使い、コンビニで缶ビール、コーヒーやジュース、お菓子などを買いキッチンスタッフ、ホールスタッフ全員に配った。「いつもありがとう。」
 毎朝早くから仕込みや、いつも妥協のない料理を提供してくれるキッチンスタッフ、真心を持ってお客様に接し、いつも助けてくれるホールスタッフ、自分たちを大きな心で包み指揮している店長やマネージャー。今となって、その日に彼らと缶ビールを飲んだことを思い出すと、我々OUTBACKの主義が、全て一日に凝縮され形となり現れたように感じる。それは、“思いやり”と“まごころ”を込めた食の提供を通じ、従業員、お客様、ご縁のある方々に”感謝”と”喜び”を届け、皆様が”幸せ”になってもらえる会社になる”である。